近年、通信制高校を選ぶ生徒が増え、それに伴って通信制高校そのものも増えています。

通信制高校という学び方が広く知られるようになり、さまざまな事情を抱える生徒にとって進学の選択肢が増えたことは、とても良いことだと思います。

一方で、通信制高校に長く携わっている立場として、最近少し気になることがあります。

それは、生徒数の増加と同時に、学校そのものも非常に速いペースで増えていることです。

通信制高校は急速に増えています

2025年度には、通信制課程を設置する高校は333校となり、前年の303校から30校増えました。

通信制高校で学ぶ生徒も約30万5,000人となり、前年から約1万5,000人増えています。

単純に計算すると、1年間で新たに増えた通信制高校生約500人につき、学校が1校増えたほどのペースです。

今後も通信制高校への進学割合が高くなる可能性はあります。

しかし、日本全体では少子化が進み、高校へ進学する年代の人口そのものは減っていきます。

そのため将来的には、

「増え続けた学校の数に対して、生徒数が十分にあるのか」

という問題も考えなければならない時期が来るのではないでしょうか。

生徒数の伸びが止まる前に、学校の供給過剰が先に問題になる可能性もあります。

学校が増えること自体を否定したいわけではありません

新しい通信制高校が設立されること自体が悪いわけではありません。

新しい教育方法や、新しい考え方を持つ学校が生まれることは、教育全体にとって必要なことです。

ただ、学校数が増えれば、一校当たりが募集できる生徒数は少なくなります。

すると学校側は、

「もっと目立つ特色をつくらなければ」

「もっと早く生徒にアプローチしなければ」

「SNSや広告を強化しなければ」

「オープンキャンパスをもっと魅力的にしなければ」

と考えるようになります。

学校経営を行う以上、生徒募集や広報活動は必要です。

英風高等学校も、ホームページやSNS、学校見学や個別相談などを通じて、学校を知っていただくための広報活動を行っています。

ですから、広報そのものを否定するつもりはありません。

ただ、通信制高校の競争が激しくなりすぎることで、学校同士の競争が、

「より良い教育をする競争」から「より多くの生徒を獲得する競争」へ変わってしまわないか。

私たちは、そこを少し心配しています。

学校の中心は、やはり「入学後の教育」であってほしい

学校には限られた時間、人員、費用があります。

本来であれば、授業の改善、学習支援、生徒相談、進路指導、教員配置、校内環境の整備など、入学後の教育にできるだけ多くの力を使うことが望ましいはずです。

ところが生徒募集の競争が過熱すると、広告や広報、生徒獲得のためのイベントにも多くの時間や費用を使わざるを得なくなります。

広報も教育も必要です。

それでも私たちは、

学校の中心にあるべきものは、やはり「入学後の教育」であってほしい

と考えています。

「今までにない学校」という言葉について考える

最近では、

「これまでにない学校」

「新しい学校のカタチ」

「自由に、自分らしく学べる学校」

といった言葉を目にする機会も増えました。

もちろん、本当に新しい教育方法や優れた取り組みもあります。

一方で、その内容を詳しく見ると、学習支援、学校生活支援、進路支援、オンライン学習、登校日数を選べる仕組み、専門コースの設置、校外学習など、以前から多くの通信制高校が取り組んできた内容であることもあります。

時代に合わせて教育を改善することは大切です。

ただ、

「新しい言葉で説明されていること」と「本当に新しい教育であること」は、必ずしも同じではありません。

通信制高校は、今に始まった教育制度ではありません。

これまでも長い間、毎日学校へ通うことが難しい生徒や、自分に合った学び方を必要とする生徒たちを受け入れてきました。

そしてその積み重ねを、大切にしてきました。

学校の価値は「卒業するとき」に分かる

学校選びでは、どうしても入学前に見えるものに目が向きます。

校舎、コース、学校行事、SNS、パンフレット。

もちろん、それらも大切な情報です。

しかし学校の本当の価値は、入学前だけでは分かりません。

大切なのは、入学した生徒がしっかり学ぶことができたか。

安心して学校生活を送ることができたか。

困ったときに相談できたか。

自分の進路について考え、実現できたか。

そして卒業するとき、

「入学した頃の自分より少し成長できた」

と思えるかどうかではないでしょうか。

私たちは、

「新しいことをやっている学校」であることより、「卒業するときに生徒が成長している学校」でありたい

と考えています。

英風高等学校が高校時代に身につけてほしいこと

英風高等学校が生徒たちに身につけてほしいと考えているのは、社会の中で自分の力で歩んでいくための基本的な姿勢です。

例えば、

  • 決められたスクーリングに出席すること。
  • レポートの締切を守ること。
  • 学校生活のルールを守ること。
  • 苦手なことや思い通りにならないことにも、すぐに諦めず、少しずつ向き合うこと。
  • でも困ったときには一人で抱え込まず誰かに相談すること。

こうしたことは、資格や技能のように分かりやすく数字に表れるものではありません。

しかし、高校卒業後、大学や専門学校へ進学しても、社会に出ても必要になる力だと考えています。

なぜ英風高等学校には校則があるのか

英風高等学校には、指定の制服や身だしなみ、授業中の私語などについて一定の校則があります。

「通信制高校なのだから、もっと自由でもよいのでは」と感じる方もいるかもしれません。

もちろん、自由な校風を大切にする学校もあってよいと思います。

ただ英風高等学校では、社会の中で生活していく以上、一定のルールの中で行動することを学ぶことも高校教育の一つだと考えています。

多くの人は企業や組織の中で働くことになります。

一方で、将来、自分で会社をつくる人もいるでしょう。

そこには勤務時間や仕事上の決まりがあり、一緒に働く人への配慮も必要です。

社会そのものにも、法律だけでなくさまざまなルールやマナーがあります。

ルールを守るということは、単に誰かから言われたことに従うということではありません。

自分の行動によって周囲に迷惑をかけないこと。
同じ場所で過ごす人に配慮すること。

そうした姿勢にもつながるものだと考えています。

例えば、授業中に私語をしないというルールも、単に厳しくするためのものではありません。

静かに授業を受けたい生徒、集中して学びたい生徒の学習環境を守るためです。

英風高等学校の校則は、生徒を縛ることそのものを目的にしているのではありません。

社会の中で周囲に配慮しながら、自分自身で生活していくための土台を身につけてほしい。

そのために必要なものだと考えています。

「では、英風高等学校も淘汰されるのでは?」

ここまで読まれて、

「英風高等学校だって淘汰される可能性があるのでは?」

と思われる方もいるかもしれません。

その通りです。

英風高等学校だけが特別に生き残る保証など、どこにもありません。

少子化が進み、通信制高校が増え続ければ、本校も生徒から選ばれなくなる可能性はあります。

私たち自身も広報活動をしていますので、

「きれいごとではないか」

「少し偽善的ではないか」

と感じられる方がいても不思議ではありません。

それでも、このことについて書いておきたいと思いました。

英風高等学校自身も、競争の中にいる一つの学校だからです。

選ばれる努力をする。

教育内容を改善する。

学校を知っていただく努力をする。

それでも、いつか学校としての役割を終える可能性はあります。

学校に永遠というものはありません。

英風高等学校は「通過点」の学校です

英風高等学校では以前から、生徒にとって本校は目的地ではなく、未来へ向かって進むための「通過点」であると考えています。

高校に入学することも、英風高等学校を卒業することも、最終目標ではありません。

その先には、進学や就職、そして長い人生があります。

もし将来、英風高等学校が学校としての役割を終えることがあったとしても、これまで本校で学び、卒業した生徒たちが、その後の人生を自分らしく、有意義に歩んでくれているのであれば、学校として一定の役割を果たし、社会に貢献することができたのではないかと思います。

学校が何年続くか。

生徒数が何人になったか。

どれだけ大きな学校になったか。

もちろん、学校を運営する以上、継続していく努力は必要です。

しかし、それ自体が教育の最終的な目的ではありません。

学校が続くために生徒がいるのではなく、生徒の未来のために学校がある。

私たちは、その順番だけは間違えたくないと思っています。

通信制高校が増える時代だからこそ

これからも通信制高校は変化していくでしょう。

新しい学校も、新しい教育サービスも、新しい学び方も登場すると思います。

英風高等学校も、時代の変化に合わせて改善すべきところは改善し、自分たちの教育を知っていただく努力を続けます。

しかし、変えてはいけないものもあります。

学校は何のためにあるのか。

生徒に何を身につけてほしいのか。

卒業するとき、どのような姿になっていてほしいのか。

そして、その先の人生をどのように歩んでほしいのか。

通信制高校の選択肢が増え続ける今だからこそ、そうした学校教育の原点をあらためて考える必要があるのではないでしょうか。

英風高等学校はこれからも、

「新しい学校」であることを競うのではなく、「生徒が成長できる学校」であることを大切にしていきます。

英風高等学校は、生徒の人生における一つの「通過点」です。

だからこそ、その通過点で過ごす時間を大切にする。

派手ではなくても、安心して学べること。

落ち着いて学校生活を送れること。

そして卒業した先へ、一歩前へ進めること。

それが、英風高等学校がこれからも大切にしていきたい学校の姿です。